お茶の知識 2025/07/06

おいしいプーアール茶の条件は、産地・原料・ブランド

台湾では「プーアール茶を購入することは、不動産を購入することに似ている」と言われます。
茶は不動産と同様に場所、原料、ブランドが重要な要素となります。

少しだけ編集部の友人の話をさせてください。
友人は10年前、有名なデベロッパーが建設したマンションを購入しました。当時、その地域の相場よりやや高い価格で購入したため、友人は不安を感じていました。しかし、10年後、地下鉄の開通や地域の発展を経て、物件の価格は倍以上に跳ね上がりました。そして、友人はマンションの転売によって大きな利益を得ました。

実は、プーアール茶も不動産と同じなのです。例えば、中国雲南省にある冰島、昔帰、老班章といった有名な産地の茶葉は年々価格が上昇し、高値が続いています。広大な茶市場の中で価値ある投資対象を見極めることは、ひとつの学問と言っても過言ではないでしょう。

不動産購入と同じように、茶は産地が市場価格を左右します。次に、質の高い茶葉と製茶技術がプーアール茶の潜在的なおいしさを引き出します。最後に専門的なブランドの3つがそろうことで、茶の価値が決まります。

今回は良いプーアール茶を購入するための知識を、王德傳のディレクターである王俊欽氏の意見を交えながら紹介します。

【 おすすめ産地:雲南瀾滄江(らんそうこう)沿岸の四大茶区 】

不動産を選ぶ際、立地は市場価格を左右する重要な要素です。一般的に、台湾の台北市は新北市より不動産評価額が高く、信義区は万華区より高い傾向にあります。さらに、地下鉄に近い物件は交通の便が悪い場所よりも価値があることは、想像しやすいでしょう。同じ地域でも条件によって不動産の価格が異なるため、購入前に調査を行い、予算や好みに合った物件を選ぶことが大切です。

プーアール茶も同じです。
良質な産地で採れた茶葉を選ぶことで、将来的な価値を期待することができます。

茶樹は温暖で多湿な気候と、柔らかい光を好みます。雲南省南部は北回帰線が横断しており、熱帯と亜熱帯が交差する場所に位置しています。また、瀾滄江が流れているため、十分な水源があります。標高1,500~2,200メートルの起伏に富んだ地形は、独自の気候が形成され、各産地ごとに異なる風土の味わいを生み出します。そのため、雲南省南部はプーアール茶に最適な環境と言われています。

王德傳のディレクターである王俊欽氏は、プーアール茶を購入する際、まず雲南省の四大茶区から選ぶことを推奨しています。各茶区には、それぞれ有名な茶山や産地があり、知名度や需要に応じて価格が異なります。瀾滄江に沿って分布する四大主要プーアール茶産地は、北から南にかけて、保山茶区、臨滄(りんこう)茶区、普洱(プーアール)茶区、西双版納(シーサンパンナ)茶区があります。これら四大茶区は、それぞれ異なる風土を活かし、独自の味わいを生み出します。

保山茶区:緯度が最も高く、茶の香りは深みがあり、味わいは甘くまろやか

保山茶区は雲南省の四大主要産地の中で最も緯度と平均標高が高い地域です。そのため、気温が低く降水量が最も少ないという気候の特徴があります。この地域では、昌寧(しょうねい)という古茶の産地が特に有名です。

昌寧は瀾滄江の中下流域に位置し、滇西(ディンシー)高原の山々に囲まれた場所にあります。この地域には樹齢100年以上の古茶樹が15万本以上、さらに全県に約2,5000ヘクタールの茶園があります。年間を通して気温が比較的安定しており多湿な気候のため、生産される茶は重量感があり、深みのある香りと甘くまろやかな味わいが特徴です。

臨滄(りんそう)茶区:生産量が最も多く、茶葉は濃厚で強い香り

臨滄茶区は「瀾滄江(らんそうこう)」と「怒江(ぬこう)」の中下流域に広がる高原で、雲南大葉種茶の原産地です。雲南省全体の中で最も茶の生産量が多く、「プーアール茶の名産地」と称されています。この地域で生産されるプーアール茶は強いお茶のエネルギーが特徴です。また、熟成させることで茶に含まれる豊富なペクチンが、まろやかな舌触りとほのかな酸味、さらにフルーティーな香りをより濃厚にします。

特筆すべきは、臨滄茶区に位置する「曉光山茶区」です。この地域は現在注目を集めている「昔帰(しくい)茶区」と同様に、宋朝時代に大理国が皇室へ献上した献上茶の産地でもあります。

曉光山茶園は原生林に囲まれた環境で、水分が集まりやすく、茶樹は肥沃な土から豊富な栄養を吸収します。曉光山茶園の茶にお湯をそそぐと、淡い黄色の澄んだ色味に、爽やかで甘くまろやかな味わいが口に広がります。この茶は新茶としても熟成後でも楽しむことができる優れた品質を持っています。曉光山茶区の味わいは、臨滄茶区全体の味わいに比べ、より優雅で繊細な特徴があり、将来さらに注目を集める産地として期待を集めています。

普洱茶区:広大な古茶園と景邁特有の蘭花香

普洱(プーアール)は、雲南省景洪県思茅地区(現在の普洱市)に由来する地名で、雲南南部における重要な貿易の中間地点であり、大きな茶葉市場として知られています。古くから、瀾滄江(らんそうこう)流域に位置する各県、かつて西双版納(シーサンパンナ)で生産された茶葉は、すべて普洱地区に集められ、加工された後に各地へ流通していました。この歴史から「普洱(プーアール)茶」という名前が付けられたと言われています。

景邁(チンマイ)は、普洱茶区内で最も古茶樹の密度が高い産地で、原生林の中に混生している古茶樹は、特有の蘭花香(ランの花のような香り)を生み出しています。景邁産のプーアール茶は、清らかで甘い味わいが持続し、まるで新鮮な花のような香りを楽しめます。最初はわずかに渋味を感じますが、その後すぐに濃厚な甘みが湧き上がります。また、花の香りは茶が熟成するほど強くなります。

西双版納(シーサンパンナ)茶区:六大茶山を有し、茶は深いコクと華やかに広がる香りが特徴

西双版納(シーサンパンナ)は、普洱茶区の中でも最も有名な産地です。清代には皇室の献上茶の産地として知られており、全域が北回帰線の南に位置します。このため、四大茶区の中で最も緯度が低く、平均標高が低い一方で、年間平均気温と降水量は最も高い地域です。

この地域には、歴史的に有名な「六大茶山」があり、その中でも「倚邦」と「易武」が特に有名です。この二つの茶山で生産されるプーアール茶は清朝時代、天朝に献上された最高級品でした。この地域のプーアール茶は市場でも非常に人気が高く、価格も高騰しています。例えば、不動産市場で例えるなら、信義区のような価値の高い「一等地」と言えるでしょう。

易武で生産されるプーアール茶は、大葉種の茶樹から作られており、「班章王、易武后(班章は王、易武は后)」と言われるほどの評価を受けています。易武は、雲南普洱の名山・名寨の中でも際立っており、香り高く滑らかな口当たりで知られ、「易武味」と呼ばれる独特の味わいを持っています。一方、倚邦で生産されるプーアール茶は非常に特徴的で、自然変異種である中・小葉種の茶樹から作られています。この茶は、有機質が豊富な赤土で育まれたことにより、優雅で繊細な味わいを持ち、プーアール茶区の中でも上品さと品格を兼ね備えています。

王德傳ディレクター王俊欽氏の提案

プーアール茶を初めて購入する場合は、まず臨滄茶区の茶葉がおすすめです。臨滄茶区の茶葉は、豊富な成分が含まれ、市場での過度な価格操作がまだ行われていません。将来の値上がりも期待できます。特に、臨滄茶区内の「曉光山茶区」は、今後の成長が期待される産地であり、不動産でいう優良物件といえるでしょう。

【おすすめの原料:風土の味わいを忠実に醸し出す古樹茶】

プーアール茶を購入する際は、まず樹齢を重ねた茶樹から作られた古樹茶(こじゅちゃ)を選びましょう。収穫時期は春摘みが最適で、茶葉は手摘みの「一芯三葉」を基本とし、一部黄葉(こうよう)を混ぜることで変化を促進させます。黄葉とは成熟した大きな葉のことで、香りと甘みの成分が豊富に含まれています。適度な黄葉は有益菌が早く繁殖する助けとなり、よりよい茶葉になります。

古樹茶と呼ぶには以下の3つの条件が必要であり、これらを満たさない茶樹はすべて「台地茶(だいちちゃ)」と分類されます。

①樹齢が100年以上であること。

②古樹茶は種子による有性繁殖で育成され、高く伸びた茶樹で主根が土深くまで伸びており、無性繁殖に比べて耐性があること。100年以上の時を経た茶樹は、逆境に対抗するために生成される成分がより豊富です。

③茶樹の密度が高すぎない原生林内で、十分な栄養を吸収できる環境が整っていること。

「茶樹が吸収するものは、私たちが飲むもの。」と王德傳のディレクターである王俊欽氏は述べます。

「茶樹の特徴として、地上の木が高ければ高いほど、地中部分の根も深く伸びます。そのため、高木である茶樹ほど深層から養分を吸収できます。」一方で、枝が横に広がるように育った茶樹は、根が地中深くまで伸びず、浅い層からの養分しか吸収できません。

古樹茶は、木の根が地中深く伸び、豊富な栄養を吸収しているため、茶葉に含まれる変化価値の高い成分が多く、潜在的な可能性が非常に高いといわれています。一方、台地茶は根が浅く、含まれる成分が少ないため、変化の余地も限られています。収穫時期で言えば、春茶が最上級品です。春茶は冬の寒さに耐えるために、アミノ酸や豊富な物質を生成するため、茶にペクチンが多く含まれ、様々な味の変化を生み出します。

原料の選定では、手摘みの「一芯三葉」に適度な黄葉を混ぜることが最適です。この比率は、非常に貴重な「号級普洱(古代プーアール茶の総称)」から受け継がれています。黄葉は成熟した葉であり、香り成分と甘みが非常に豊富です。適度に黄葉を加えることで、中国湖南省の安化地区で生産される有益菌である金花菌が早く繁殖し、茶葉の変化をより良いものにします。また、資産価値や将来的な価値の可能性を考慮するなら、同じ産地、同じ季節で収穫された原料のプーアール茶を選び、生茶からゆっくりと保存することをおすすめします。これにより、産地の風味とその年ならではの独特な味わいを保つことができます。

【おすすめの製造方法:昔ながらの方法で製造】

建築の工法が住居の安全性に大きく影響を与えるように、茶作りにおいても製造方法は非常に重要です。これらの違いは、時間が経つことでその価値が明らかになります。

茶作りについて、王德傳のディレクターである王俊欽氏は「建物は新しい技術で、茶作りは昔ながらの方法で」と語ります。茶葉には温度が必要であり、手作業で作られた茶は機械で作られたものよりも味わい深く、日光で茶を乾燥させる萎凋(いちょう)は、機械乾燥よりも茶に豊かな風味をもたらします。「茶作りはごまかしが効かない。『手間暇をかけて』作るべき」と話します。昔ながらの方法でで製造されたプーアール茶は、機械製造よりも時間と手間がかかるものの、機械ではできない繊細で絶妙な味の調和を醸し出します。

プーアール茶作りの工程は以下の通りです。

手摘み

   

最適な茶葉の摘み取り方法は、「一芯三葉」を手摘みすることです。茶の収穫は一日に二回行われます。

一回目:午前中に摘み取り、午後に加熱処理を行う。
二回目:午後に摘み取り、夕方に加熱処理を行う。

このように時間を分けることで、摘み取った茶葉が長時間放置されて水分を失い、不要な化学変化を起こさないようにしています。

茶葉を広げて涼ませる

   

摘み取った茶葉は竹籠に入れ、人力で運ぶため移動中に熱がこもり、水分が蒸発しやすくなります。

茶葉の成分の75~78%は水分で、茶ポリフェノール、アミノ酸、カフェイン、糖類、タンパク質などの有効成分は22~25%を占めています。

茶葉の水分量が8~12%以下になると、化学変化が始まり発酵が進んでしまうため、摘み取ったばかりの茶葉は平らに広げて温度を下げ、不要な化学変化を防ぎます。

高温の鍋で加熱

   

加熱処理は、十分な高温でしっかりと行うことが重要です。

温度が足りないと酵素が完全に破壊されず、茶葉の発酵が進んでしまい、化学変化を起こします。その結果、長期保存に適さない茶葉になってしまいます。

手揉み加工

   

加熱後の茶葉は、手作業でていねいに揉み込み、均一になるように解きほぐし、繰り返し揉みこみます。

手揉み加工を施すことで、茶葉の温度が上昇し、水分が適度に分解されます。後の発酵が促進され、より濃厚な茶質を生み出すことができます。

乾燥

     

揉み込んだ茶葉は、天日干しでじっくり乾燥させます。

この天日干しによって、茶葉に含まれる豊富な成分がしっかりと保たれ、「茶ポリフェノール」と「酵素」の働きがゆるやかになります。

この工程を挟むことで、熟成すればするほど芳醇な香りと味わいを楽しめるプーアール茶になります。

【ブランドが茶の価値を決める鍵】

不動産を購入する際に有名なデベロッパーを選ぶように、プーアール茶を購入する際もブランドは非常に重要です。王德傳のディレクターである王俊欽氏はこう述べます。「優れたブランドは、その分野の専門家であり、明確な市場ポジションを持っています。例えば、プーアール茶を購入するなら、プーアール茶専門のブランドを選ぶべきです。一方で、今日はプーアール茶を売り、明日は紅茶を売るといったブランドは歴史が浅く、市場で淘汰される可能性があります。たとえ買いやすい価格が魅力的でも、保有価値や将来の投資価値を期待することは難しいです。」

王徳傳は各茶山の年間生産量に基づき、昔ながらの方法で春摘みされた数量限定の「ビンテージプーアール茶」を製造しています。日本の食品用紙材と大豆インクで印刷されたラベル「内飛」を茶餅に挟み、年度ごとの限定番号を付与しています。この「ビンテージプーアール茶」は、通気性が良く、乾燥した環境で保存されることで、熟成され、新たな味を生み出します。